ベトナムで2日、ボー・バン・トゥオン共産党書記局常務(52)が新たな国家主席に就任した。
ベトナム政府は外交面で全方位外交と対外開放を、経済面で貿易拡大と投資誘致を軸に世界の各国・地域との関係強化を方針としている。2007年1月11日をもってWTOに正式加盟してから公平で透明性を重視した投資環境の整備や外交関係の設立、自由貿易の拡大、経済連携の推進に積極的に力を入れてきた。
トゥオン氏は最高意思決定機関の党政治局における最年少メンバーであり、経済運営・外交などを経験した若手政治家である。今後、ベトナムの経済発展において重要な役割を果たすと期待されている。汚職問題への対応に厳格に取り組んできた一方で、経済運営・外交にも能力を発揮してきたため、チョン書記長の後任になることが予想されている。
トゥオン氏は1970年に生まれ、出身地はベトナム南部のビンロン省であり、その経歴は下記の通りである。
出所:ベトナム共産党資料に基づきCPVN作成
これまでのキャリアの中でトゥオン氏は大きな成果をあげてきた。
• 2011年~2014年に、クアンガイ省の共産党支部長を務めた時、トゥオン氏は約18の海外直接投資プロジェクト(総額3.1億米ドル)を誘致した。その殆どは製造・加工業への直接投資プロジェクトで、貧しいクアンガイ省にとっての経済的な意義は大きかった。2013年に、国道1号が通ったクアンガイ省の区間(約58キロ)に、土地収用に関わる問題が生じた時、トゥオン氏は自身で現地まで足を運び、自ら問題を解決した。農村部における困難な課題にも対応できる人物として、現地の人々に高く評価された。
• 汚職処理に関して、新型コロナウイルスのテストキットの品質不良問題(ベトア社事件)、FLC社・タンホアンミン社・バンティンファット社などの社債問題で、厳格な姿勢を示した。トゥオン氏の考えでは、汚職とは企業と官僚との間の不透明な関係が異常に形成された結果生じるものであり、ベトナムの発展を妨げる要因であるため、取り締まることが急務だとしている。汚職処理に成功すれば、ベトナムで活動している国内外企業にとって、行政手続きに関わるコストが圧縮される効果が見込まれる。直近、汚職問題が発覚した政治家が多く見受けられたが、トゥオン氏自身は汚職に関わったことがなく、信頼できる政治家だと人々に思われている。
では、トゥオン氏の就任はベトナム経済にどのような影響を与えるであろうか。
• ベトナムの政治は、党書記長・国家主席・首相・国会議長による集団指導体制であるが、チョン党書記長とファムミンチン首相が北部出身、フエ国会議長は中部出身であり、南部出身のトゥオン氏が就任したことにより、地方的なバランスがとれることが期待されている。トゥオン氏の国家主席就任により、四人の集団体制が形成され、政治の安定に寄与すると期待されている。
• 現在、ベトナムは多くの地域・国々と自由貿易協定(FTA)を結んでおり、若手のトゥオン氏はこれらのFTAを更に推進することが期待されている。ベトナムの経済運営においては、「アメリカ寄り」や「中国寄り」などメディアの曖昧な分類ではなく、あくまでも「経済的な合理性」に基づき、最も合理的な経済政策をとる、というのがベトナム政府の考え方である。今後も、経済を発展させるために、ベトナムは全方位外交を継続する可能性が高い。トゥオン氏にはホーチミン青年団の勤務経験があるので、今後世界の政治・経済状況の変化が激しいなか、ベトナムの若手リーダーの選抜・育成に能力を発揮することも期待されている。また、同氏には北部・南部・中部の3つの地域での勤務経験があるので、地方の多様さがあるベトナム国家の運営にその経験を活用できると思われる。
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