情報通信省(MIC)によれば、デジタルテクノロジーで構成される情報通信技術(ICT)産業は約1,536億米ドルに達したと推定されている。MICからの概要レポート(2024年12月29日付けベトナム語)には、2024年のデジタル経済全体が前年比20%成長し、2024年国内総生産(GDP)の 18.3%を占めたとの推計も示されているが、そのうちICT産業売上高は2024年名目GDPの約33.7%、ベトナムの付加価値部分は同10.7%と捉えられ、力強い発展を伴うICT産業の存在感を確認することができる。
出所:情報通信省(MIC)
「Make in Vietnam」戦略(2019年に情報通信省が提唱した、ベトナムでの設計・創造・生産により、グローバル・バリューチェーンにおけるベトナム製品の付加価値の向上を目指した行動プログラムとスローガン)を推進してから5年間で、ICT産業売上高に占めるベトナムの付加価値の割合は2019年の21.35%から2024年推計では31.8%へと飛躍的な増加を示した。ICT企業数や人材数も顕著に増加している。
出所:情報通信省(MIC)
日本でも活動するベトナムの代表的なIT企業20社を対象としたベトナムソフトウェア・ITサービス協会(VINASA)の調査によると、2020年からの4年間で20社集計の売上高は約2倍(6.72億米ドルから13.45億米ドル)へと伸長し、年間成長率は22~28%であった。売上高は従業員総数の成長率(6~10%)の数倍早く成長し、ベトナムのIT業界で労働生産性が大幅に向上していることが報告されている。
FPTコーポレーション(以下、FPT)は、ベトナムのICT産業を代表するトップ企業である。同社の開示によれば、2024年11か月間におけるFPTの売上高は前年同期比19.5%増の56.4兆ベトナムドン(以下、VND)、税引前利益は同19.8%増の10.2兆VNDであった(米ドル換算ではそれぞれ約22.3億米ドル、約4.1億米ドル)。海外市場からの売上高は前年同期比28.1%伸び(11か月間の売上高の米ドル換算値は約11.2億米ドル)、FPT全体の売上の50%を超えた。特に日本やアジア・太平洋市場向けの伸びが顕著であり、日本向けの伸び率は前年同期比30.2%(日本円建ての伸び率は36.1%)、アジア・太平洋向けの伸び率は同39.3%であった。IT技術への投資需要の高まりを反映し、11か月間でFPTは海外市場で45件の大型プロジェクト(500万米ドルを超える規模のもの)を獲得したとのことである。
ベトナム政府はデジタル技術産業の発展を支援するため、デジタル技術産業法の制定を目指している。この法案では、デジタル技術製品とサービスに関する法的枠組みが規定され、半導体、人工知能(AI)、ソフトウェアなどの重点分野への優遇措置や、人材へのインセンティブが含まれる。ベトナムが当該分野で伝統的な加工組み立て業から設計や技術革新を伴う先端分野へとシフトしていくことをベトナム政府は目論んでいる。
データセンター(以下、DC)はベトナムの主要な新技術産業といえる。調査機関であるベトテルIDCによれば、ベトナムのDC市場規模は2030年までに12.6億米ドルに達する見通しである(平均成長率10.8%予想)。2023年電気通信法(改正)が2024年7月にベトナムで施行され、外国資本100%によるDC事業の提供が認められるようになったことも、DCプロジェクトの促進要因となっている

出所:ベトナム政府メディア、各社のニュースリリースなどを基にキャピタル アセットマネジメントが作成
ベトナムのデジタル技術企業の競争力を武器に、政府による支援やしなやかな外交術が加わることで、ベトナムICT産業が飛躍を遂げていくことを当社では期待している。
※為替レートは各年末の値を使用した (2024年末 1米ドル = 25,251ベトナムドン)