フィリピンにおける観光産業の経済規模を観光直接付加価値(TDGVA)という指標で捉えると、2024年の名目TDGVAは2.35兆ペソ(約6.36兆円)となり、2023年の2.12兆ペソより11.2%増加した。これはフィリピンの2024年国内総生産(GDP)全体の約8.9%を占め、前年の8.7%から増加した(名目、実質ともに同率)。アジア内でも成長率が高い国であるフィリピンの経済に観光産業が貢献していることが伺える。
フィリピン統計庁(PSA)では、旅行者による宿泊、飲食、輸送サービス、旅行代理店などの予約サービス、娯楽・レクリエーション、観光特有商品(ショッピング)などを旅行者による支出として集計開示している。フィリピン居住者による国内観光支出は、国内旅行や国際旅行の一部として国内でなされる支出を含み、2024年には3.16兆ペソ(約8.54兆円)へと前年比16.4%増加した。外国人旅行者による2024年インバウンド観光支出は0.70兆ペソ(約1.89兆円)であり、同0.4%増であった。2023年に新型コロナ禍前の2019年(0.60兆ペソ)を超える水準にまで回復した後、勢いを保っているベトナムとは異なりインバウンド支出が鈍化した。居住者の国際旅行に伴うアウトバウンド観光支出は2024年に約0.35兆ペソへと同37.5%増という高い伸びを示した。これはGDP計算上では輸入に含まれるマイナス項目ではあるが、国内経済の支えになっている海外出稼ぎ労働者(OFW)の活発な活動を含んでいることが背景にあると考えられる。
観光産業の雇用者数は2024年には推定675万人で、2023年の637万人から6.1%増加したと推定されている。観光産業の雇用がフィリピン国内の総雇用に占める割合は2024年に13.8%だった。
オイコノミヤ・アドバイザリー&リサーチ社のエコノミスト、レイニエル・マット・M・エレセ氏は、「2024年の平均インフレ率は3.2%で、2023年の6%から大きく低下し、経済状況の改善が観光客増加の一因となっている可能性がある。」と述べ、インフレの緩和が昨年の観光支出増加の重要な要因であったと指摘した。
出所:フィリピン統計庁(PSA)