10月7日 (米国時間) に公表されたFTSEラッセルの2025年9月版「FTSE株式国別分類報告書」(以下、報告書)によれば、ベトナム株式市場はフロンティア市場から新興国(セカンダリー・エマージング)市場へと格上げされることとなった。正式な格上げは2026年9月21日に発効予定である。詳細な格上げスケジュールは、FTSEラッセルのプロセスとして2026年3月の中間レビュー時に公表される計画となっている。
2026年3月の中間レビューでは、ベトナム株式取引におけるグローバル証券会社へのアクセス改善で十分な進展を遂げたかどうかが確認される予定である。これはセカンダリー・エマージング分類への格上げにとっての要件ではないが、グローバル証券会社へのアクセスに関するFTSEラッセル指数の諮問委員会による意見を慎重に検討した結果であるという。国際的投資家のニーズを満たし、株価指数利用者が指数を複製(注:取引所からのデータ取り込みをせずに、手元で算出利用できることを意味すると思われる)できる必要があり、そのためにグローバル証券会社へのアクセス改善に対処することが格上げに不可欠であると報告書に記載されている。
主要な株価指数算出会社による格上げという成果を達成するため、2024〜2025年にかけてベトナム政府は、技術的障壁の解消や制度整備など、下記に掲げる各種対策を総合的に実施してきた。
出所:ベトナム証券委員会などの関連報告に基づきCPVN編集
新興国市場への格上げによって、ベトナム証券市場はグローバル資金との結びつきが強まり、資本市場にとって追い風になることが期待されている。
1) パッシブ運用資金の呼び込み:FTSE All-World、FTSE EM (エマージング・マーケッツ)、FTSE Asiaなどの新興国市場指数にベトナム株式市場が組み入れられることで、パッシブ運用資金が自動的に流入する。なお、市場分類の移行は複数回に分けて実施される予定であるため、パッシブ運用資金の流入もそれに応じて段階的に発生する見込みである。
2) アクティブ運用資金の呼び込み:アクティブ運用資金の流入も期待される。市場が整備されると、パッシブおよびアクティブ運用の投資家を含め、比較的短い期間で約40~60億米ドルの資金が市場に流入する予測を米証券大手の部門トップが示したことがある。
3) 流動性とバリュエーションへの影響:外国人投資家から資金流入すると、市場流動性の改善や予想PER (株価収益率) などで捉えたバリュエーション水準の切り上げが起こることが期待される。
4) 質の転換:プロセスの標準化、証券監督者国際機構 (IOSCO) の国際基準への準拠により、ベトナム市場への信頼が強化され、金融センターとしての競争力が向上する。
FTSEラッセルによる市場格上げの実現は、ベトナム証券市場がグローバル資金とより強く結びつくための扉を開くだけでなく、MSCI (モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)が提供する指数での市場分類における格上げ、すなわち市場分類における新興国市場への完全な格上げを目指すための重要なステップとなる。市場の整備を伴う格上げの実現により、2030年までにベトナムに250億米ドルの資金流入がありえると世界銀行では予想していた (参考:10月7日時点のベトナム株式市場時価総額はBloombergによると3,487億米ドル。250億米ドルはその7.2%相当となる)。