フィリピン統計庁(PSA)によれば、2025年第3四半期(Q3)の実質国内総生産(GDP)の成長率は前年同期比4.0%と前四半期の5.5%から減速し、政府目標の5.5~6.5%を下回った。財務省は、この減速は政府支出の遅れによる一時的な停滞であると説明、2026年には支出の効率化とインフラ予算改革が効果を発揮することによって力強い回復が見込まれることを強調した。
主要な経済部門で捉えると、農林水産業は前年同期比+2.8%、製造業等鉱工業が同+0.7%、サービス業が同+5.5%と成長した。個別業界では、保健福祉、教育、行政・防衛・義務的社会保障がそれぞれ同+12.2%、同+6.8%、同+6.6%と伸びが目立っていたほか、商業(同+5.0%)、金融・保険(同+5.5%)、専門・ビジネスサービス(同+6.2%)など、サービス業に含まれる業界を中心に成長に貢献した。
需要サイドでQ3の成長に貢献したのは、構成比で約79%(名目ベース)を占める家計の消費支出(同+4.1%)、政府の最終消費支出(同+5.8%)であった。2025年1〜9月期のインフレ率は前年同期比1.7%まで低下、フィリピン中央銀行の目標レンジである2〜4%を下回り、国内需要を支えた。
政府は優先分野向けの支出を通じて、成長力を取り戻す取組を進めている。2025年第4四半期には1兆3,070億ペソの支出が予定され、その大半は社会サービスに充てられる。これは年末の成長を下支えする刺激策となる。2026年に向けた戦略としては、成果をもたらす説明責任のある支出、制度の透明性、効果的で影響力のある投資に重点を置く。現在審議中の2026年度国家予算案(6兆7,930億ペソ)は、国民に最大の経済的利益をもたらすことを目論んでいる。同時に財政規律と透明性を重視し、無駄な支出を排除する方針である。インフラは引き続き成長の重要な牽引役となる。公共事業道路省では、インフラ資金の公正な配分、事業の重複排除、地方自治体との連携強化などの改革を進めていく。