2025年6月、ベトナム国会は国際金融センターに関する決議222/2025/QH15号を可決した。この決議は2025年9月1日に発効した。この決議に沿い、ベトナム政府はホーチミンとダナンの2都市にベトナム国際金融センターを開発・運営するための法令の制定と施行に向けた法的基盤を早急に整備中である。具体的には、外国為替政策、銀行政策、金融政策および資本市場育成など、14の施策が講じられる。チュオン・ホア・ビン副首相は、2025年6月の国会演説において、国際金融センター建設の全体目標は、「2025年にホーチミン市とダナン市の2地域に国際金融センターを設立すること。ベトナム国際金融センターの運営目標は、2035年までに世界金融センター指数(GFCI)の世界トップ75入り、2045年までに世界トップ20入り」であると説明した。また、ベトナムの国際金融センターにおける優遇政策として、為替政策、税制・金融優遇措置、保険政策、インフラ・土地政策、人材・ビザ政策なども強調された。

国際金融センターで取り扱う金融商品およびサービスには、株式、債券(国債、社債、インフラ債)、投資信託受益証券、先渡、先物、オプション、スワップなどの金融デリバティブ、オルタナティブ、投資信託管理、保険・再保険、銀行および外国為替(融資、貯蓄、資産管理など)、グリーン・ファイナンス、炭素クレジット(先進国間で取引可能な温室効果ガスの排出削減量証明・排出枠)、フィンテックサービス、デジタル通貨、および市場のニーズに応じたその他の金融商品とサービスが含まれる予定である。さらに、国際金融センターの会員は、外貨での借り入れとベトナム国内の団体・法人への貸し出しも可能である。
12月11日、ベトナム国会は国際金融センターにおける専門裁判所に関する法律を正式に可決した。そして、先の決議222号の実施に向け8つの関連政令が策定された。ベトナム国際金融センター設立に関する政令、労働・雇用・社会保障に関する政令、土地・環境対策に関する政令、ベトナム国際金融センター傘下の国際仲裁センターに関する政令、金融政策に関する政令、銀行設立・運営に関するライセンス、外国為替管理、マネーロンダリング防止、テロ資金供与防止等に関する政令、商品取引所の設立・運営、物品・サービスの取引に関する政令である。
国際金融センターは、①資本の誘致と経済の活性化、②金融取引の基盤構築、③同国の競争力向上という3つの重要な役割を担うことになる。そして、国際金融センターは、国家の金融政策を支援し、金融システムの安定化、および金融セクターの人材の質向上に貢献することが期待されている。さらに、ハイエンドな金融サービスを創出し、そして社会実情から生まれる新たな市場の試行・管理も企図されている。
ベトナム政府は、2026~2030年における国内総生産(GDP)の平均成長率年10%以上の高成長目標の達成を目指しており、ダナン市とホーチミン市で2つの国際金融センターを設立することはベトナムの成長戦略の一環であると言えよう。グエン・ヴァン・タン財務相は国際金融センターの意義について、「ベトナムの金融市場の効率的な発展を促進し、国際基準に追いつき、持続可能な経済発展に貢献し、国際舞台におけるベトナムの役割・地位・威信・影響力を高めることにつながる。」と説明している。このように、ベトナムにとって国際金融センターの設立は同国の経済力強化に向けて踏み出した重要な戦略の一歩と窺える。