キャピタル アセットマネジメント株式会社

鉄道インフラ大プロジェクト:南北高速鉄道など

情報提供資料

2026年1月27日

● 南北高速鉄道は全長1,541km、総投資額約670億米ドル、2035年開通を目標とするプロジェクトであり、長期的な経済成長に向けたインフラ整備と、プロジェクト自体による経済効果が期待される。
● ベトナム政府は建設工事に関して、可能な限りの国産化を指示した。
● ビングループ傘下のビンスピードとチュオンハイ自動車(Thacoグループ)が投資案を提出したが、ビンスピードは2025年12月、他のプロジェクトへの経営資源集中を理由に南北高速鉄道工事参加への撤退を表明した。これを受けて、政府と関係省庁はプロジェクトの実現可能性調査や投資家の募集など、迅速な対応に動いた。
● ベトナムは、民間部門と国有セクターの両輪による経済発展を遂げていく見通しである。

 ベトナム政府は、3つの戦略的ブレークスルー(制度、インフラ、人材)のうち、特にインフラ整備を重要な要素として、交通インフラを中核とする近代化を推進している。過去5年間、国土の開発と長期的成長の基盤構築が進んでおり、高速道路、橋梁、港湾、物流から都市鉄道、発電所、ハイテクゾーン、空港、高速鉄道まで、多数のプロジェクトが実施・検討され、将来の先進国入りを視野に入れたインフラ整備が進められている。中でも鉄道プロジェクトの主なものとして、首都ハノイと南部の商都ホーチミンを結ぶ南北高速鉄道、ハノイ~クアンニン(最北東部で世界遺産のハロン湾を擁し、中国と国境を接する省)高速鉄道、北部内のラオカイ(山岳地帯)~ハノイ~ハイフォン(港湾都市)鉄道、ハノイ~ランソン(ハノイの東北部)鉄道とハイフォン~ハロン~モンカイ(北部の海岸地帯)鉄道の5本が注目されるほか、ハノイとホーチミン市内の複数のメトロ・プロジェクトが展開されている。
 最大の注目案件である南北高速鉄道について紹介する。全長1,541km、総投資額約670億米ドルを見込むプロジェクトである。ベトナムでは、経済成長に伴う南北間の移動が急増してきた半面、現在の南北間の陸路は国道1号線と老朽化した単線・非電化鉄道1本のみで、ハノイ~ホーチミン間の鉄道での移動には35時間を要する。同プロジェクト完成後は最短5時間20分に短縮され、経済・観光への大きな波及効果が期待される。

 南北高速鉄道計画が注目を集めるもう一つの理由として、その建設工事自体による経済効果がある。ベトナム政府は建設にあたり可能な限りの現地調達、すなわち国産化を指示しており、国内企業の育成や技術刷新、ノウハウの取得も重要視している。
鉄道インフラ大プロジェクト:南北高速鉄道など
 同プロジェクトの経緯は以下の通りである。

鉄道インフラ大プロジェクト:南北高速鉄道など

(出所)政府メディア

 2025年4月23日に公布された「南北高速鉄道プロジェクト投資政策に関する実施計画」と題する決議第106/NQ-CP号に基づく工事スケジュール計画は以下の通りである。

鉄道インフラ大プロジェクト:南北高速鉄道など

(出所)政府メディア

 2025年、政府は企業や投資家の参入意向をヒアリング、評価するための多数の協議会合を開催した。同プロジェクトの実施計画の提案に関心を示したのは、ビングループ傘下のビンスピード高速鉄道投資開発会社、Thacoグループ、ベトナム投資開発グループ、ディスカバリーグループ、ベトナム鉄道公社などの大手企業であった。そして、最大の鉄鋼メーカーであるホアファットグループ、デオカー交通インフラ投資、フェコン建設(FCN)やビナコネックスなどの建設企業、フランス系アルストム、ドイツ系シーメンス、中国の鉄道建設総公司と山東高速鉄道グループなどの国際企業も同プロジェクトへの参加意向を表明した。このうち、Thacoグループとビンスピードは同プロジェクトの投資案を提出した(例えば、Thacoグループの提案は投資額613.5億米ドル、自己資本20%、実施期間7年間という概要が示されていた)。

 しかし、12月25日、ビングループは南北高速鉄道プロジェクトへの投資登録を取り下げた。同社は、経営資源を他のプロジェクト群(オリンピック・スポーツ都市圏<25年12月17日に承認取得済、全体調査面積約16,093ha、総投資額約360億米ドル、国立競技場を擁する>、ホーチミン市ベンタイン~カンザー間<全長54㎞、総投資額33.5億米ドル、12月19日着工済み>およびハノイ~クアンニン高速鉄道路線<全長124㎞、総投資額55.4億米ドル、着工済み・2028年に商業的運行開始予定>、エネルギープロジェクト<中部ハティン省にある設計発電能力900MWの風力発電、ハイフォン市にある総投資額70億米ドルで発電能力4,800MWとなるLNG火力発電など>)に集中させることを理由としている。施工プロセスや運営形態、投資資金とメンテナンス資金、利用者数予測と収益性の評価などの検討に時間を要する点も撤退の一因であると推察される。ビングループの撤回を受け、政府と関係省庁は直ちに建設省にスケジュールの確定、運営委員会の設置、新たな投資家の迅速な募集を指示した。同時に、建設省鉄道プロジェクト管理委員会はプロジェクトの実現可能性調査報告書の作成を担当することとなった。

 また、鉄鋼会社として粗鋼生産能力年間1,600万トンで世界トップ30に匹敵する規模を誇るホアファットグループは2025年12月19日、中部ハティン省のズンクアットにて鉄道向け特殊鋼生産工場を着工した。同工場は27年までに高速鉄道レール用の鋼材を生産し、全国の主要な鉄道プロジェクト向けの供給を目指している。
 ベトナムは、隣国中国と繋がる国際鉄道の整備にも注力している。首都ハノイや港湾都市ハイフォンから中国国境に至る鉄道路線として、北部ラオカイ省~ハノイ~ハイフォン、ランソン省ドンダン~ハノイ、クアンニン省モンカイ~ハイフォンの計3路線が計画されている。このうち、ラオカイ省~ハノイ~ハイフォン路線は6省・市を通過する幹線全長約400km(支線約28km)、設計時速160km、総投資額約80億米ドルの公共投資モデルによるプロジェクトを計画し、実現可能性調査報告書の作成を経て、2030年までの完成を目指している。
鉄道インフラ大プロジェクト:南北高速鉄道など

ラオカイ省~ハノイ~ハイフォンの鉄道
(出所)政府メディア

 多数の大規模プロジェクトの同時進行には課題があるが、対策も講じられている。特に一部の建設資材(土砂、石材、レンガ、整地材、道路盛土材料)の不足や価格高騰の問題に対し、関係各省庁は建設資材価格の管理と安定策の強化、不足資材への依存度が低い橋梁やトンネル工事の優先実施、鉱山開発と生産能力拡大に向けた採掘許可手続きの簡素化、鉱業法・土地法の見直し、許認可手続きの効率化などの対策を検討・実施している。

 ベトナム政府は交通インフラ開発を重点分野と位置づけ、一連の大規模プロジェクトへの投資を行い、人材育成や制度整備を含む成長基盤を構築してきた。2025年5月にトー・ラム書記長が署名した決議68号では、民間部門の発展を国家経済の重要な原動力と位置づけ、また2026年1月の決議79号では、国有セクターの役割と発展目標を明確化することで、民間と国有の両輪による経済成長を推進する姿勢を示している。2026~2030年の2桁成長の実現を目指すベトナムの動向について、今後も継続的に注視する予定である。

以上

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