企業側も速やかに対応している。石油・ガス部門を統括するペトロベトナム(PVN)とペトロベトナム・ガス(PVGas)は以下の対策案を提出した。
① 工場の稼働能力維持のために、備蓄原油の緊急供給を行い、価格規制を柔軟に調節すること。
② 補充のための輸入計画を策定し、様々なシナリオに応じて供給源と輸送ルートを多様化すること。
③ ベトナム国家銀行(中央銀行)に対し、輸入燃料の需要増に対応する外貨準備策を策定することを要請。
④ 税制政策に関しては、コンデンセート、ナフサといった生産原料に対する輸入税を0%まで引き下げを検討すること。
PVGasは生産活動および日常生活に必要な液化天然ガス(LNG)と液化石油ガス(LPG)の供給を確保するため、以下の一連の戦略的ソリューションを積極的に実施している。
① 2026年上半期にLNGタンカー3隻分を輸入する計画において、カタールと東南アジアから2隻分のタンカー(合計約15万トン貯蔵)を手配することに成功した。紛争勃発前の早期調達戦略により、同社は現在の市場価格より最大50%低い価格を確保した。現在、第3隻目の輸送についてサプライヤーを選定中である。
② 国内のガス処理プラントでのLPG生産量を増加させ、国内LPG生産量の5%を追加供給することが期待されていること。
③ 国内市場の需要を優先するために、輸出入のバランスを柔軟に保ちながら中東以外の LPG 輸入先の多様化を進めていくこと。
ベトナム水産物輸出加工業者協会(VASEP)とベトナム繊維衣料協会(VITAS)などによれば、中東は大きな市場ではないものの、国内企業に対し以下の勧告が発せられている。
① 国際輸送ルートの変動は依然として物流コストの上昇につながる可能性があるため、輸送ルートの多様化が必要。
② 地域の冷蔵施設の在庫を増やし、スポット市場への依存ではなく長期輸送契約を優先する必要がある。
③ 海上保険や海運会社の方針の動向を注意深く監視し、輸入業者と連絡を取り合い、必要に応じて配送時期や方法を柔軟に調整する必要がある。
ベトナム政府は、関係者からの勧告や提案をすべて総括した後、2026年3月6日付の決議第36/NQ-CP号を公布し、中東で進行中の紛争に対処するためのいくつかの緊急対策の実施を指示した。この決議の主な内容は以下の通りである。
① 政府は、石油法に基づき、国内で保有する原油・コンデンセート(輸出契約が未締結のもの)を、国内製油所へ優先的に売却することを義務付けた。
② 財務大臣に「PVNに対して具体的な事項について決定するよう指示し、柔軟性、効率性、および石油関連法の遵守を確保する」権限を委ねた。
③ PVNとその傘下企業(ビンソン製油・石油化学、ベトナム石油公社)に原油・石油生産原料の売買・輸出入を許可すること。
④ 商工省と財務省に国家管理の責任を委任し、危機の間、PVNをはじめとする企業を指導する権限を付与すること。
⑤ 商工省に対して、発電事業者(ベトナム電力グループ、PVN、および関連企業)が使用するガスは国産ガスを最大限に優先するという原則に合意したうえで、ガス源を輸入やLNGに転換するためのメカニズムを、財務省と連携して構築するよう指示した。
⑥ 現行、ガソリン・軽油価格の管理体制が政令第80/2023/ND-CP第1条第11項の規定に従っているが、新体制下では、市場で一般的に消費されているガソリンおよび軽油製品のいずれかの基準価格が、直前の価格調整期間に発表された基準価格と比較して7%以上上昇する場合、新基準価格の発表は商工省が財務省と連携したうえで、基準価格が上昇した翌日に実施すること。
⑦ 財務省および関係機関に対し、2023年5月31日付の政府法令第26/2023/ND-CP号(輸出関税表、特恵輸入関税表、物品リストおよび絶対税率、混合税、関税割当枠外の輸入税に関するもの)に基づいて発行された特恵輸入関税表における特定の石油製品に対する最恵国(MFN)輸入税率を改正する法令を緊急に起草し、2026年3月7日までに政府に提出するよう要請した。
⑧ 商工省と科学技術省に対し、バイオ燃料に関する基準や規制、バイオ燃料移行ロードマップの早期実施の条件について調査・検討するよう要請した。