フィリピン中央銀行(中銀)は8月15日の金融政策決定会合で、主要な政策金利である翌日物借入金利を0.25%引き下げ、6.25%にすることを決定した。金利引き下げは新型コロナウイルス禍にあった2020年11月以来3年9か月ぶりである。レモロナ総裁は記者会見にて「個人消費の伸びが減速しているため、経済活動を支えていく」と説明した。年内に追加で0.25%利下げする可能性も示唆した。
フィリピン統計局(PSA)によると、2024年7月の消費者物価指数(CPI、2018=100)は前年同月比+4.4%となり、2023年10月以来の高水準になった。食品とエネルギーを除くコアインフレ率は6月の同+3.1%から7月には同+2.9%へと鈍化した。1年前(2023年7月)のコアインフレ率が同+6.7%であったことに比べると、CPI全体の上昇率が同様な水準にありながらも、コアインフレ率が落ち着いてきたといえる。
7月のCPI上昇率の高まりの背景としては、6月に前年同月比+0.1%へと鈍化していた住宅・水道・電気・ガス・他の燃料が7月には同+2.3%へと伸び率を高めたことが挙げられる。さらに、食品・非アルコール飲料が6月の同+6.1%から7月の+6.4%になった。台風3号などの影響により、食料品の供給が乱れたことが影響した。なお、2024年1~7月期のCPIは前年同期比+3.7%で、政府の目標レンジ (+2~4%)に収まっており、中銀では7月のインフレ加速は一時的と捉えている。
インフレ見通しのリスクバランスにつき、中銀では2024年と2025年には下振れリスクのほうをより強く意識している。下振れリスクは主に米の輸入関税引き下げに由来し、上振れリスクは電力料金の上昇や外部要因から発生する可能性があるとのことである。今後、金融政策委員会では、持続可能な成長に寄与する物価安定を確保するため、慎重なアプローチを続けていくとみられる。
出所:フィリピン統計庁(PSA)