ベトナム株式市場は、FTSE(ロンドン証券取引所傘下のFTSEインターナショナル)とMSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)が提供する指数での市場分類において「フロンティア市場」に分類されているが、ベトナム政府は「新興国(エマージング)市場」への格上げに向けて尽力している。ベトナム証券委員会の3月11日開示では、格上げ基準を満たすための9つのタスクを掲げ、解決に向けた作業内容や期限を示した。タスクの1つとして韓国取引所(KRX)設計システムの実装予定時期が5~6月とされたのを含め、タスクの過半を6月までに解決する方針である。
FTSEでは、進行中のレビュー結果を4月8日に発表予定である。当社では、2025年9月にベトナムが「新興国市場」へと格上げされる可能性が高まり、その発表は7月上旬または4月8日になると想定する。
2018年9月以来、FTSEではベトナム市場を新興国市場へと格上げする可能性のある「ウォッチリスト」に掲げてきた。昨年10月のレビューでは、セカンダリー・エマージング格上げ基準9つのうち7つに対して適合済み(下表)であり、次なるイベントとして証券保管振替機構(VSDCC)による詳細な運用規則発表について言及していた。残る2つの課題(決済サイクルと取引の失敗・フェイルの問題)は、昨年11月の「プレファンディング規制(取引前の資金の預入れ要求)の緩和」などを経て対応済みとされるが、新システム下でのVSDCC運用規則の詳細がタスクの1つとして4月に完全公開される予定であり、これを見届けてから7月に格上げ決定発表となる流れも想定される(実際、パキスタンの昨年9月からの分類変更
「格下げ」は昨年7月4日に発表された)。
出所:FTSE資料に基づき当社が作成
*2nd EM = セカンダリー・エマージング分類に求められる基準に X を記した
もう1つの主要指数であるMSCIにおける格上げでは、外国人保有可能枠を含む外国人投資家への開放度、取引フレームの効率性などの課題が残っており、格上げ実現までにはもう暫くの期間を要する見通しである。このうち、外国人投資家への開放度の課題は、前掲FTSE評価項目における6行目「外国人投資家の売買制限がないか、選択的に発生するか」において示されている。もう1段、アドバンスト・エマージングへの格上げを評価する際の基準としてこの項目に対して公式にチェック印が入っており、FTSEにおいてもさらなる格上げを目指す場合には解決が必要となるであろう。とはいえ、昨年10月のFTSEによるベトナムに係るレビュー文書の中で、「外国人所有制限に達した、またはそれに近づいている証券の非国内投資家間の取引を促進する効率的なメカニズムの導入が重要」という記述があるため、セカンダリー・エマージング分類への格上げに際しても、一定レベルの課題とされている模様である。
世界銀行のエコノミストであるアンドレア・コッポラ氏は、ベトナム財務省主催の会議(2024年4月)にて、ベトナムの株式市場が格上げされた場合、ベトナムの地位向上により、「2030年までに(波及効果を含めて)250億米ドルの資金を引き付ける可能性がある」という世界銀行の予想を説明している。このように、格上げされた場合の資金流入の規模は大きいと予想されており、ベトナム株式市場に与えるインパクトも想定される。ベトナム証券委員会が3月開示したタスクのリストとその後の一連の取り組みは、ベトナム政府による格上げに向けた本気度を示したものであり、FTSEによる格上げが2025年内に実現する可能性は高まってきたと当社では考える。
ベトナム証券委員会による3月11日開示(英語)の掲載箇所
https://ssc.gov.vn/webcenter/portal
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