キャピタル アセットマネジメント株式会社

ベトナムに対する46%のトランプ関税

情報提供資料

2025年4月3日

米国のトランプ大統領は4月2日、ベトナムに対して46%という、全世界対象となる10%水準よりも高水準の相互関税を課すことを表明した。ベッセント米国国務長官によれば、この関税税率は「上限」であり、トランプ政権による要求を満たせば引き下げられる可能性があるという。とはいえ想定外の高税率であり、ベトナムの輸出動向に悪影響を及ぼす可能性が指摘されている。ベトナムにとって米国は2024年商品輸出の相手先シェアで29.5%というトップの比率を占める重要な相手先である。輸出品目にはエレクトロニクス製品、繊維・医療品、履物、水産物、農産物などが挙げられる。ロイター報道によれば、2024年に米ナイキは履物の50%、衣料品の28%を生産、米アディダスも履物生産の39%をベトナムに依存しているという。

■ベトナム政府の動き
緊急の外交問題に対処するため、ベトナムのフック副首相は4月6日から米国を訪問し、米国と貿易問題について協議する予定である。ベトナム航空によるボーイング機の購入などを材料に米国と交渉することが見込まれている。加えて、4月2日を迎える直前までベトナムは米国に対して互恵的な姿勢を示してきた。当社による3月20日付けレポート「ベトナムと米国の貿易・投資協力の強化」に記載した動き以外を列記すると、①米スペースXによる衛星インターネットサービス「スターリンク」の認可、②3月18日には米国からの訪越ビジネス代表団(技術、防衛、エネルギー関連企業など60社以上)と投資機会や貿易に関して協議、➂3月31日には最恵国待遇相手への関税率引き下げ(自動車、エタノール、液化天然ガス(LNG)など)、④ビングループによるハイフォンにおける火力発電所新設提案(米ゼネラルエレクトリックからの設備・メンテナンス導入や米国からのLNG購入が想定される)などの施策を矢継ぎ早に打ち出していた。
ベトナムは対米国での影響を認識しており、米国以外の相手先との連携の強化や国内での施策も推進している。例えば、ブラジルの大統領がベトナムを訪問した際にはブラジルへの水産物輸出とブラジルからの鶏肉輸入増の合意がなされた。欧州の指導者たちもベトナムを訪問予定となっている。米国以外の国々との貿易協力の強化が模索されている。加えて、ベトナム国内でも大胆な経済政策の転換が進んでいる。例えば、支援すべき産業の強化策、民間経済の活性化策、インフラ整備や公共投資の拡大、行政機構の再編による行政機能効率化の推進、省・市などの行政区の再編などである。
今回表明された米国による関税施策が継続した場合、世界経済およびベトナムに対する悪影響を及ぼすことが想定される。しかしながら、ベトナムによる国外および国内に対する対応策の実行力、すなわち、米国との貿易リスクを軽減しながら、諸外国との交渉を強化し、国内経済を支える施策を進めることにより、ベトナムは試練を制御していくことが期待される。長期的なベトナムの発展の方向性が揺らぐことはないと当社では捉えている。

以上


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