インドネシア中央統計庁(BPS)によれば、2025年第1四半期の実質国内総生産(GDP)成長率は前年同期比4.87%となり、鈍化した。世界および国内における不確実性が続く中で、家計消費支出がやや減速し、政府消費が減少に転じ、投資の伸びが緩慢であったことが背景要因である。
インドネシア経済の屋台骨である家計消費(GDPの54.5%を占める)は前年同期比4.89%の成長にとどまった。また、政府消費は昨年の同国大統領選に伴う政府支出拡大の反動もあり、同1.38%の減少へと転じた。輸出は同6.78%伸び、鉱物処理やダウンストリーム(付加価値の高い川下産業)製品の輸出によりプラス成長の勢いを維持した。輸入は同3.96%の増加にとどまったが、これはインドネシアの国内需要が回復していないことが要因だと推察されている。
インドネシアは1~2月に財政赤字へと転落、プラボウォ政権は無料の学校給食制度を前倒し的に拡充した一方でインフラ関連事業を中心に約2.8兆円の予算削減を打ち出したことが混乱を招いている模様である。国内の購買力が喚起されない中、消費者物価指数の上昇率が低調に推移している。このことは実質成長率の下支え要因ではあるが、国内消費が伸びを欠いたことの表れでもある。加えて、米国による関税政策がもたらす世界的な影響への懸念はインドネシアの見通しにとってリスクとなる。プラボウォ政権は5年以内に経済成長率を8%とする目標を掲げているが、高付加価値産業の育成などの課題が待ち受けている。